野沢民芸商店を訪ねて

民芸収集の旅 その3


赤べこ
寅の張子


12月に入り、来年の干支、そして年賀状の図案に思いを巡らせる中、ふと今年の年賀状に使用させていただいた郷土玩具「赤べこ」を制作している野沢民芸さん(以下敬称略)のことが気になり、webサイトをながめていました。

すると、11月の中旬に「野沢民芸の直営ショップ、『野沢民芸商店』オープン決定!」の文字が。 これは、何としても直接行ってみなくてはならないと思い、昨年に続き再び会津の地へ行くことにしました。





寒冷前線の影響で急に雪景色になった北関東を、履きたての冬用タイヤに若干の不安感じながら一路、東北自動車道を北上。那須塩原あたりで若干の雪景色を見た以外はほとんど「雪」を感じなかった道路も、猪苗代を超えたあたりからは一面雪景色へと一変しました。 


野沢民芸商店は、レトロな建物が建ち並ぶ「七日町通り」の一角にありました。 鶴ヶ城の北約1キロの位置にあり、JR七日町駅から中央通り(国道118号)へと東西に伸びるこの通りを中心に広がる七日町エリアには、大正浪漫の雰囲気がただよう建築物を多く目にすることができます。

藩政時代には会津五街道のうち日光、越後、米沢街道の主要道路が通り、城下の西の玄関口として問屋や旅籠、料理屋が軒を連ねていたそうで、その後も会津一の繁華街としてにぎわうなど、現在でも観光客に人気の通りだということです。








昨年に続き、今年の年賀状に使用させていただいた「寅」の張子も、もちろん野沢民芸の作品。野沢民芸では今年の干支に合わせ、昨年まで制作していた「寅」の張子をリニューアルされたそうです。(上写真)


向かって右のお尻にくるっとした模様が描かれているものが2022年の寅年に合わせリニューアルされたもの。向かって左が昨年まで制作されていたもの(私が昨年柳津購入)。比べてみると、目付きや眉毛、前歯や体の模様など細かくリニューアルされ、なんとも少しほんわかした優しい寅になっていることがわかります。「この表情の変化って、何か狙いや想いがあるのですか?」と代表理事であり絵付氏でもある早川美奈子さんに質問すると「みんなの意見が集まって産まれたのがこの子なんです」と、私にとっては意外な返事が。一番力のある職人さんが「これだ!」と決めて、他の職人さんは同じように複製品を作るものだとばかり思っていた作成方法ではなく、現在の職人さんが様々な角度で意見を出し合い、野沢民芸らしい作品を創り出しているのだそうです。また、張子の原型は、昔ながらのものを伊藤豊さん(父・創業者)にも意見を伺いながら修復し使用しているとのこと。

「虎だけでなく、赤べこも、起き上がり小法師も、同じ型でも様々な絵の入れ方で、多くのキャラクター、そして表情に対応できるんです。古くからある様々な母型の素晴らしさを、改めて感じます。」と早川さん。










張子の寅では、昨年まで使用していた油性絵の具を伸びの良い水性絵具に変更し、起き上がり小法師アマビエでは水から出てキラキラ輝く鱗をまとっていたという古い伝承になぞらえ、今までの制作では登場していないキラキラしたラメ入りの画材にも挑戦するなど制作の幅を広げる野沢民芸の作品。最近では販売店の限定モデルや有名キャラクターからのコラボレーションの依頼も多数寄せられ、なかなか生産の対応が追いついていないという。 

「店の奥のスペースでのんびり絵付をしながら、たまに来ていただけるお客様の対応をしようかと思い、週末だけ開く小さいお店をオープンさせました。」と話すお店には、今回の取材撮影中にも多くのお客さんが来店し、「方々探して、やっと手に入りました!」と喜びの声が。

早川さんが、のんびり店の奥で絵付けをするのは、まだまだ先になりそうです。







これからが冬本番の会津。 春になると石部桜に代表される美しい桜が県のいたるところで見られるのだそうです。厳しい冬と共にコロナ禍を乗り越え、早く桜の下でのんびり花見ができる日を待ち望んでいます。